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間質性膀胱炎、慢性前立腺炎、過活動膀胱など排尿の問題と向き合う専門鍼灸院



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当院での間質性膀胱炎に対する治療成績

 
 
当院では泌尿器科上田クリニック間質性膀胱炎に対する鍼治療の有効性に関する共同研究を行っています
 
治療に難渋する間質性膀胱炎に対する鍼治療を併用した統合医療
-ハンナ病変の有無による治療効果の差異-
(伊藤千展,本城久司,上田朋宏:日本泌尿器科学会総会2017)
 
 
 

間質性膀胱炎って?

 
膀胱の慢性炎症を伴う、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの過知覚膀胱症状を呈する疾患です
 
細菌性膀胱炎と異なり、抗菌薬による治療や、過活動膀胱治療薬は無効であり、現在(2018年時点)、国内で有効性の認められた保険適応の治療は膀胱水圧拡張術のみです。しかし、その膀胱水圧拡張術でも治療効果の不十分な患者様が多く、著しく生活の質を低下させることから、指定難病(ハンナ型間質性膀胱炎のみ)となっています。
 
 
当院では、間質性膀胱炎に対する新たな治療の選択肢として、鍼治療と泌尿器科学的治療との併用による統合医療の構築に取り組んでいます。
 
 

かかりつけの泌尿器科で、このようなことはないでしょうか?

 
 
・慢性前立腺炎と診断され、内服治療を続けるも下腹部や会陰部の痛みが取れない…
・過活動膀胱や前立腺肥大症による頻尿と言われているけど、なかなか良くならない
・頻尿で困っているが、検尿に異常は無いので「心因性頻尿」ですよと言われている…
 
 
上記のような難治性の頻尿症例においては、膀胱鏡検査を受けると、実は「間質性膀胱炎」だった…ということをしばしば経験します。当院ではこのような場合に、排尿記録をとり、明らかな1回排尿量の低下を認める場合は、専門医による膀胱鏡検査を受ける事をおすすめしています。
 
 
 

 
現在、東アジアにおける新ガイドラインでは、過知覚膀胱症状を呈する症例のうち、膀胱鏡検査にて、ハンナ病変(膀胱上皮にできる潰瘍)を認めるものをハンナ型間質性膀胱炎、ハンナ病変は無いが、水圧拡張後粘膜出血を認めるものを非ハンナ型間質性膀胱炎、過知覚膀胱症状はあるが膀胱鏡では特異的所見を認めないものをHypersensitive Bladder(過知覚膀胱)の3つに分類しています。
 
 
 

 当院で行なっている仙骨部鍼刺激

 

 
仙骨部鍼刺激の刺鍼部位と刺入方法。鍼は仙骨孔に刺入している訳ではなく、
3Dイメージの通り、仙骨面に沿うように60mm刺入し、10分間の徒手刺激を行います。

 
膀胱水圧拡張術、経尿道的電気凝固術、内服治療(抗アレルギー剤、抗コリン剤、β3受容体刺激剤、クエン酸ナトリウム剤など)、膀胱内注入療法(局所麻酔薬、DMSO、BOTOX)などの泌尿器科学的治療を行うも、十分な症状改善が得られていない難治性間質性膀胱炎(57名)を対象に、週1回の治療間隔で12回の鍼治療を行い、ハンナ型、非ハンナ型に分けて鍼治療の効果判定を行いました。

(週1回の来院が困難な方は、本研究のデータ解析からは除外しています。)
 
 

仙骨部鍼刺激で膀胱の容量が向上する 

 
 


57名のうち、排尿日誌を回収できた33名(ハンナ型14例、非ハンナ型19例)の平均1回排尿量の推移です。どちらの群も鍼治療により膀胱の容量が増えたことが分かります。
 

 
 
 

 仙骨部鍼刺激による間質性膀胱炎症状の改善

 
 

間質性膀胱炎 症状スコア(重症度を調べるスコア)では、ハンナ群では鍼治療12回時点で有意な症状改善が得られており、症状が顕著に改善するのに、だいたい3ヶ月かかることを示しています。(平均12.4点から平均8.6点までの減少は、ほとんどの症例で、重症から中等症へと改善した事を示します。) 
 
一方、非ハンナ群では鍼治療4回(治療1ヶ月)で顕著な症状の改善を認めており、ハンナ型よりもかなり早期に治療効果が現れていることが分かります。(平均9.7点から平均5.4点までの減少は、ほとんどの症例で、中等症から軽症へと改善した事を示します。
 
 
 

鍼治療の開始は 発症後 なるべく早い方が良い?

 
 
 
 
 グラフは、非ハンナ型間質性膀胱炎 30例の罹病期間(間質性膀胱炎を発症してからの期間)と鍼治療効果についての相関を示したものです。
発症からなるべく早期の方が、治療効果は早期に表れやすく、しかも大幅な改善を認めており、4〜5年経過するにつれて、治療効果は出にくくなる傾向にある、と言えます。
 
 
(※あくまで治療12回での結果ですので、発症後5年以上経過している場合でも、治療継続により大幅な改善を認める患者様も多数おられます。)
 
 
 

 仙骨部鍼刺激により膀胱粘膜病変の状態も改善する

 



非ハンナ型間質性膀胱炎における鍼治療前後での同部位の膀胱粘膜の変化です。
多数認めた新生血管が、鍼治療の継続により減少しており、頻尿、膀胱不快症状の著明な改善を認めています。








  



上図の膀胱鏡所見に示す通り、仙骨部鍼治療の継続は、症状のみならず、膀胱上皮病変の改善も得られることが分かります。鍼治療による、過敏な膀胱知覚線維の抑制は、間質性膀胱炎による膀胱粘膜の慢性炎症に対しても効果的であると考えられます。



本症例は、初来院時点で、発症より5年半経過していた、78歳(女性) ハンナ型間質性膀胱炎の患者様の膀胱鏡所見です。
鍼治療開始時は強度の膀胱痛により1日30回を超える頻尿でしたが、仙骨部鍼治療の継続により膀胱痛、頻尿の改善が得られ、鍼治療開始から約1年後(鍼治療32回時点)の膀胱鏡検査では、ハンナ病変(潰瘍病変)の減少が観察され、新生血管の減少、ただれた膀胱粘膜の正常化も確認されました。
 


[ その他の治療法 ]  仙骨孔内 鍼通電刺激

上記の仙骨の骨膜刺激でも、症状の軽減が見られない重症例の方のみ
下図に示す、仙骨孔内(S2-3もしくはS3-4)に対する鍼通電刺激を行っております
直接の神経刺激となるため、より高い効果が期待されます。

  
※鍼通電刺激中には、膀胱、会陰部、肛門周辺に響くような感覚が得られます。
 痛み刺激とならない程度の刺激強度で治療を行います。
 


現在、過活動膀胱難治例(切迫性尿失禁)や、難治性の便失禁に保険適応となっているSNM(Sacral Neuromodulation:植え込み式 仙髄神経電気刺激療法)がありますが、当院での仙骨孔内鍼通電刺激は、SNMと類似した刺激が可能であり、同様の効果が期待できます。

植え込み装置(手術)の必要なく、通院治療にて同様の刺激を行えることは、患者様にとって負担の少ない治療の選択肢となると考えています。