過活動膀胱に対する鍼治療の効果
過活動膀胱とは?
尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常は頻尿と夜間頻尿を伴います。
過活動膀胱の症状
・頻尿 (トイレが近い)
・夜間頻尿 (夜、就寝時間中にトイレに何度も起きる)
・尿意切迫感 (突然、トイレがしたくなってたまらない)
・切迫性尿失禁 (トイレまで間に合わずに漏れる)
過活動膀胱の治療法
行動療法
①膀胱訓練
「排尿したい、と思った時にすぐにしない」排尿したくなってから、まず15分我慢する
→我慢の時間を30分、45分と延ばしていく。
②骨盤底筋体操
肛門・膣口周囲をすばやく絞めて、5秒間維持、そしてリラックス。 これを繰り返し行う。
お薬による治療
大きく分けると以下の2タイプに分かれます。
治療中の患者様はどれか当てはまるものがあるのではないでしょうか。
抗コリン薬 : ポラキス、ネオキシテープ®(貼付剤)、バップフォー、
デトルシトール、トビエース、ベシケア、ウリトス、ステーブラ
β3作動薬 : ベタニス
お薬の治療による効果が不十分な場合、鍼治療をおすすめします
しかしながら、上記の行動療法、薬物療法によっても改善されない過活動膀胱の患者様もたくさんおられます。また、お薬の副作用として起こる、口の乾燥、便秘などもしばしば問題となり、苦しむ患者様が多いです。そのような場合、副作用のない鍼治療を併用することをおすすめします。頻尿、尿意切迫感、尿失禁が改善され、お薬が減らせれば副作用も少なくすることが可能です。
当院で主に行っている仙骨部鍼治療は、薬物療法に効果を示さない過活動膀胱症状(尿意切迫感、切迫性尿失禁)にも非常に有効であることが示されています。
週1回の治療を継続することにより、尿意切迫感(膀胱の知覚過敏)が改善され、膀胱容量(おしっこの貯められる量)も増加することが示されています。治療開始時は原則週1回の治療継続をおすすめしています。症状改善が見られてくれば治療間隔を徐々に開けていきます。
仙骨部鍼治療には副作用がなく、安全な過活動膀胱の治療手段の1つです。
お悩みの患者様はぜひご相談くださいませ。
[ その他の治療法 ] 仙骨孔内 鍼通電刺激
上記の仙骨の骨膜刺激でも、症状の軽減が見られない重症例の方のみ
下図に示す、仙骨孔内(S2-3もしくはS3-4)に対する鍼通電刺激を行っております。
直接の神経刺激となるため、より高い効果が期待されます。
※鍼通電刺激中には、膀胱、会陰部、肛門周辺に響くような感覚が得られます。
痛み刺激とならない程度の刺激強度で治療を行います。
現在、過活動膀胱難治例(切迫性尿失禁)や、難治性の便失禁に保険適応となっているSNM(Sacral Neuromodulation:植え込み式 仙髄神経電気刺激療法)がありますが、当院での仙骨孔内鍼通電刺激は、SNMと類似した刺激が可能であり、同様の効果が期待できます。
植え込み装置(手術)の必要なく、通院治療にて同様の刺激を行えることは、患者様にとって負担の少ない治療の選択肢となると考えています。